排煙関係規定に係る建築基準法施行令の改正について
国土交通省 住宅局 参事官(建築企画担当)付 大和田 湧(現:住宅生産課 係長)
目次
1. はじめに
令和7年9月3日、建築基準法施行令(以下、「令」といいます。)の一部を改正する政令(令和7年政令第310号)が公布され、同年11月1日から施行されております。今回の政令改正では、防火区画等の内装制限の合理化が行われた他、排煙関係規定についていくつかの合理化が行われました。
本記事は排煙関係規定の改正の概要について説明させていただきます。
2.改正の概要
(1)無窓居室の判定基準の見直しについて(令第116条の2、令第128条の3の2関係)
無窓居室の判定では、居室の天井高に係わらず、天井又は天井から下方80cm以内にある外壁開口部以外のものは開放できる部分とみなされず、また、開放できる部分の面積は開放できる部分の設置位置や給気口の設置状況が加味されずに一律に要求されていたところ、避難安全検証法では壁面の床面から1.8m以上の部分について排煙上有効な開口部とすることができ、かつ、排煙口の設置位置や給気口の設置状況に応じて排煙口面積が要求されています。このことから、無窓居室の判定においても、これまでの技術的知見の蓄積及び避難安全検証法を踏まえて合理化を実施しました。
1)開放できる部分の設置位置について(令和7年国土交通省告示第992号)
天井高が2.6mを超える場合と2.6m以下の場合で区分し、以下のとおり規定しております。
① 床面から天井までの垂直距離が2.6m以下の場合(改正前の令の規定と同様)
天井から下方80cm以内の距離にある部分

図1 排煙上有効な開口部の条件(天井高さが2.6m以下の場合)
② 床面から天井までの垂直距離が2.6mを超える場合(改正により追加)
床面から1.8m以上の部分

図2 排煙上有効な開口部の条件(天井高さが2.6mを超える場合)
2)開放できる部分の割合の算定方法ついて(令和7年国土交通省告示第993号)
給気口から空気が供給されることによる排煙効果を見込むことで、開放できる部分の床面積に占める割合を50分の1以下とすることを可能としております。本告示を適用する条件として、第1において給気口及び排気口の構造方法を規定しており、第2において具体的な計算方法を規定しております。

図3 無窓居室の判定基準の見直し概要
排気口の構造方法として従来の開放できる部分では規定されていなかった手動開放装置を位置付けていますが、第1の規定は本告示を適用するための要件であり、全ての開放できる部分に手動開放装置を設けることは要しないため留意してください。
(2)防煙壁として扱うことのできる対象の拡大について(令第126条の2関係)
平成30年度及び令和4年度の法改正において主要構造部規定を合理化しました。これにより、燃えしろ設計の適用の幅が広がったところ、このような燃えしろ設計を行った木造のはりは、はりせいが大きく、天井から下方に突出しているため、煙・ガスの動きを対流させて制御できることから、当該はりに防煙垂れ壁としての機能を兼ねさせることができるため、防煙壁の定義にはりを追加するとともに、床面から居室又は防煙区画部分の床面席に応じた距離以上にある部分を準耐火構造とすることができることといたしました。

図4 燃えしろ設計のイメージ
準耐火構造の防煙壁は「不燃材料で造り、又は覆われたもの」と同等に煙の流動を遮ることができる一方で、火災の火炎により防煙壁自身が燃焼し煙を増加させることが考えられるため、居室又は防煙区画から在館者の避難が完了するまでに火源から準耐火構造の防煙壁に火炎が接炎しないことを条件として、告示で床面積に応じた床面からの垂直距離を規定しております。通路等については在館者が他の防煙区画から避難するための経路となり得ることから、本告示の適用対象は居室に限ることとしているため留意してください。
また、準耐火構造であるものの下端とは、防煙壁のうち準耐火構造とした部分の下端であり、床面積に応じた垂直距離より下方の部分を不燃材料で造り、又は覆われたものとすることで、間仕切壁や垂れ壁の防煙壁にも本告示(令和7年国土交通省告示第994号)を適用することができます。

図5 防煙壁の対象の合理化
(3)排煙設備の構造基準の合理化について(令第126条の3関係)
建築物の省エネ化推進に伴い、開口部の断熱性能の向上が求められていますが、令第126条の3第1項第2号の規定に基づき、排煙設備の排煙口はアルミサッシ等の不燃材料としなければならず、排煙口を断熱性能の高い樹脂サッシとすることができないという課題がありました。
また、排煙設備規定の既存不適格建築物を用途変更又は増築等する際には現行規定への適合が求められますが、既存の開口部を自然排煙口として利用するためには、木サッシからアルミサッシ等に取り換えなければならず、昔ながらの風合いを活かすことができず、サッシの交換により意匠性が失われることで当該建築物の価値が毀損されることを厭い増改築等が進まないといった既存ストックの有効活用という観点での課題がありました。
これらのことから、自然排煙口について不燃材料以外の木サッシ及び樹脂サッシであっても、30分間加熱を継続した場合でも開閉に支障がないことが実験において確かめられたため、合理化を実施しました。 なお、機械排煙口にあっては引き続き不燃材料で造る必要があります。

図6 木製の排煙口のイメージ
また、令第126条の3第1項第3号に規定する排煙口の設置位置について、避難安全検証法等の知見から、前述の開放できる部分の設置位置の合理化(令第116条の2、令第128条の3の2関係)と同様に、合理化を実施しました。なお、無窓居室の判定と異なり、排煙口は最も丈の短い防煙壁の下端高さ以上の部分に限られるため留意してください。

図7 排煙口の条件(床面から天井面までの垂直距離が2.6m以下の場合)

図8 排煙口の条件床面から天井面までの垂直距離が2.6mを超える場合)
なお、「排煙設備の設置を要しない火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分を定める件(平成12年建設省告示第1436号)」第三号の規定は、令和7年国土交通省告示第995号に包含される内容となるため改正を行い、規定を削除しております。

図9 平成12年建設省告示第1436号第三号(削除)
3.おわりに
今回は令和7年度政令改正及び関係する技術基準のうち排煙関係規定を中心に、その概要を説明しました。自然排煙口の合理化、防煙壁の対象拡大といった今回の改正内容をご理解頂き、合理化が図られた規制の仕組みを積極的に活用していただければ幸いです。
補足
本件に係る取扱いは、技術的助言(令和7年10月31日国住指発第322号)、パブリックコメントにおける国土交通省の考え方においても示されているので、参考にしてください。
また、技術的助言では、9.その他の留意事項で「建築設備設計・施工上の運用指針(編集:日本建築行政会議)」の見直しが示されたことを受け、これらを解説した「建築設備設計・施工上の運用指針 2025年版追補 排煙設備(令和7年11月1日施行)に関する運用指針」が6月24日に発行予定です。
なお、「(1)無窓居室の判定基準の見直し」により、従来は排煙設備の設置が必要とされていた「排煙上の無窓居室」についても、これに該当せず、排煙設備の設置が不要となる場合が生じ得ます。これまで定期報告を行ってきた排煙設備について、不要と判断される際は、取扱いについて所管の特定行政庁へご確認ください。

図10 排煙設備不要となるケース(イメージ)
また、「(3)排煙設備の構造基準の合理化」において、平成12年建設省告示第1436号第三号が削除されたことを受け、建築設備定期検査告示(平成20年国土交通省告示第285号)が改正され、排煙口の設置高さについても、以下のとおり変更されていますので、ご留意ください。
